最終戦争
ねえ、君はいつまでここで足踏みをするの?
新しい扉を開くのは怖いの?
いつまでこんな時を繰り返すの?
自分勝手な銀髪のメシア。
弟と戦いたくないんだね。良くわかるよ、僕にだって愛する弟がいる。
美しく弱い銀色のメシア。
新しい世界を見たくないんだね。良くわかるよ、今のこの場所はとても心地いい。
なにもわかってくれない世界のメシア。
輪廻の苦しみを僕にだけ味あわせるつもり?
「答えて下さい、兄さん。僕らと一緒にハルマゲドンのプログラムを発動させるか、あなたの父親の望むラグナロクを発動させるか!」
メシアよりも強い意思と言葉。砂子色の髪の少年の問いに、銀髪の少年が息を飲むのがわかった。
…今まで君は、何度同じ問いをされてきただろうね。
その度、僕や君の父親の望む道を避けてきたね。
今度はどうなの?今度の君はどちらを選んでくれるの?
「…ハルマゲドンを」
ゆっくりと弱く、しかし確かにその言葉を君はまた紡いだね。
「わかってくれたんですね、兄さん!」
君の弟の喜ぶ声に、僕はまた闇に落とされたようだよ。
世界はやがて白く染まった。
「…なにも見えない…真っ白だ…!」
そう。全てが崩れ去ってから、君は初めて気がつく。今まで世界が築き上げてきたもの。それを君が否定したから。悲しみの欠片となって消えてしまったんだよ。
もう一人のメシアに、始まりの場所へと導かれて、君は全てを忘れて目を覚ましたね。失うことを恐れた、最愛の肉親の声で。
「うなされてたけど、大丈夫?兄さん」
その声に最初戸惑う君は、けれど変わらぬ日常へと戻っていく。数分後の悲劇なんて考えもせず。
さあ…、僕もそろそろ出かけよう。いずれその建物から青い獣をつれて出てくる君に。
「やあ、君が刹那だね」
今まで何百回も繰り返した言葉を君に言うために。
今度こそ、七月の雪が溶ける日が来るように……。
-…-
|